HOME > 動物別症例集 > 5ページ目

動物別症例集 5ページ目

ハリネズミの神経症状に対するMRI検査の有用性

神経症状を呈し,ふらつき症候群(WHS)を疑うハリネズミに対し無麻酔下でのMRI検査を実施した二症例について、2018年のエキゾチックペット研究会にて症例発表を行った。
ハリネズミでのMRI検査の報告は未だなく,適正なデータはまだ存在しない。
今回実施したMRI検査により脳炎および脳腫瘍を強く疑う所見を得られたため,様々な神経症状に対して生前診断が可能となる事が判明した。
今後はデータの蓄積や不動化状態での撮影,さらに造影剤を用いた撮影を行う事により精度の高い診断を行う事が課題であると言える。


デグーの不整咬合

歯のかみ合せが悪くなった状態を不整咬合(不正咬合)と言います。
デグーの歯は切歯(前歯)・臼歯(奥歯)ともに一生伸び続け、硬いものをかじったりすり潰すことで削られていきます。
歯をこすり合せることが不足したり、ケージを齧ったりすると、歯が正常に削られずに不整咬合となります。

特に臼歯の不整咬合では一部分のみが削れて棘状縁という尖った部分ができ、それによる刺激で舌や頬の内側に潰瘍を形成することがあります。見た目に分かりづらく、症状がひどくなってから来院されるケースも珍しくありません。

症状は主に食欲不振と流涎(よだれ)で、そのほかに体重減少、くしゃみ、目やになどがみられることもあります。
また、牧草等の硬いものが食べられなくなることも特徴です。

一度不整咬合となったデグーは定期的な歯削りが必要になります。
不整咬合が軽度の子は無麻酔でも歯削りが行えますが、全身麻酔下での処置が必要な場合もあります。

不整咬合は予防が重要です。チモシー一番刈りのような繊維を多く含む牧草をたくさん食べてもらい、ケージ齧りを防止するために齧り木を用意しましょう。


カメの卵胞うっ滞

カメなどの爬虫類の卵巣では、卵胞という卵のもととなるものが常に作られ、通常はそのまま退縮したり卵となって排出されます。
そのサイクルが何らかの原因で崩れてしまうと、卵胞が卵巣や卵管に大量にうっ滞した状態になります。

卵胞がうっ滞してしまうと、他の内臓が押されてしまい元気や食欲の低下、直腸脱や卵管脱などの症状を引き起こしてしまいます。

卵胞は殻が作られる前の卵であるため、特に甲羅をもつカメの場合、レントゲンで確認できないことも多く、診断には腹部のエコー検査が用いられます。

治療法は、甲羅を開いて卵胞を含めた卵巣・卵管摘出手術が推奨されています。
また、手術が難しいような症例の場合はホルモン製剤を用いた内科療法も試されています。(爬虫類の卵胞鬱滞におけるリュープリン治療の可能性


ウサギの子宮疾患

ウサギは非常に子宮疾患が多い動物で、5歳以上のメスのウサギの約60%が子宮疾患になると言われています。

子宮内膜増殖症や腺癌が多く、その他にも子宮蓄膿症や子宮水腫など様々な病態が認められます。
子宮腺癌では、対応が遅れると肺や肝臓へ転移し、亡くなってしまいます。
また癌でなくても、出血多量を起こして命に関わることもあります。

症状としては陰部からの出血で発見されることが多いですが、ウサギの尿は正常でも色素により赤くみえる場合があるため注意が必要です。
また、ウサギはあまり体調の変化を表に出さない動物なので、発見した時にはかなり病態が進んでしまっていることも珍しくありません。

避妊手術によって子宮疾患は予防できます。
ウサギの麻酔はリスクが高いという話もありますが、前述のように、メスのウサギはそれ以上の高率で子宮疾患になります。
今はウサギの麻酔も進歩しており、麻酔を安全に行う専用の道具も開発されています。

健康な若いうちに、なるべく早期の避妊手術をオススメします。


コーンスネークの尿酸結石による便秘

爬虫類が持つ総排泄腔という器官は排便、排尿、生殖(産卵など)の3つの機能を持ちます。
細長い身体のヘビは、便秘を引き起こしやすい動物で、その原因として尿と同時に作られる尿酸結石で総排泄腔を詰まらせてしまうことが挙げられます。
水分不足、運動不足、温度不足(パネルヒーターの上でじっとしている)などが、尿酸結石が総排泄腔を詰まらせる原因として挙げられます。

便秘を引き起こしてしまうと食欲の低下などにつながります。
詰まった尿酸結石の取り出し方は、総排泄腔付近を押して出す方法、器具を総排泄腔に挿入して取り出す方法、手術による摘出などがあります。

正常に排便できているか、日頃から記録をつけるなどして観察してあげることが重要です。


犬の門脈・体循環シャント

門脈体循環シャントとは、腸や全身臓器から肝臓へと血液を送る血管である「門脈」と全身への体循環を担う大静脈との間に本来無い異常血管(シャント血管)ができることで様々な障害を引き起こす病気です。
ほとんどの場合先天性ですが、重度の肝臓病があると後天的に発生することもあります。

症状は元気や食欲低下・嘔吐・下痢などがあり、重症だと肝性脳症といわれる神経症状(けいれん発作、ふらつきなど)や、最悪の場合死に至ることもあります。
合併症として尿酸アンモニウム結晶による尿路結石などがあります。

診断には血液検査、レントゲン、エコー検査などが用いられ、CT検査が必要な場合もあります。

症状が軽度の場合は内服薬や食事療法で抑えられることもありますが、一般的には外科手術が選択されます。セロハン結紮術やアメロイドコンストリクター設置術などで異常血管を結紮、閉塞します。


デグーの子宮平滑筋肉腫

平滑筋細胞は子宮、胃、腸、全ての血管の壁、皮膚を含む身体のほとんどの部分で見られます。子宮の平滑筋肉腫は子宮の筋層にある平滑筋から発生し、抗がん剤治療や放射線治療が適応になりますが治療成績はあまりよくありません。デグーは腫瘍発生率の低い動物種と考えられていて、子宮に発生した平滑筋肉腫はほとんど例がありません。


プレーリードックの拡張型心筋症

拡張型心筋症とは徐々に心筋収縮機能が低下し、左心室の拡大を伴って、心不全を発症する心臓病のひとつです。症状が進行すると、肺水腫や胸水の貯留が起こってきます。プレーリードックでもこのような疾患が発症します。治療法は血管拡張薬や強心薬などを用い、肺水腫・胸水の貯留がみられた場合は利尿剤などを使用します。拡張型心筋症では左室内径短縮率(FS)の低下がみられます。


爬虫類の卵胞鬱滞におけるリュープリン治療の可能性

爬虫類における生殖器疾患は比較的多く、中でも卵塞症が問題になりやすい。卵胞鬱滞は発生機序が明確になってはおらず、外科的な卵巣・卵管摘出術が主な治療法であり、内科的な治療法はいまだ確立されていない。
卵胞鬱滞を呈している爬虫類(ミシシッピアカミミガメの一症例およびサバンナモニターの一症例)に対して、酢酸リュープロレリン(商品名:リュープリン)を用いて治療を行う機会を得た。
今後も症例の蓄積を行い、安全域の決定や投与間隔、有効な症例の見極め、使用法の多様化等が課題となる。
この症例は2017年のエキゾチックペット研究会にて症例発表を行った。


デグーのペニス脱

デグーのペニス脱は発情期の雄でよく起こり、外傷・尿路系疾患でもなる場合があります。この状態を放置しておくと自分でかじったり舐めてしまったり、表面が乾燥してしまったりすると元に戻らなくなってしまうこともあります。最悪尿が出なくなり、亡くなってしまうこともあります。一般的には脱出したペニスを元に戻し抗生剤や消炎剤などで治療しますが、かじってしまった部分や乾燥して壊死した部分は外科的に切除したり包皮を縫合したりすることがあります。


<<前のページへ12345678910

このページのトップへ
このページのトップへ